コミュニケーションの回路を回そう②~脆弱な言語機能と廃用
言語機能は、本来、長期にわたって回復していくものですが、それを阻害するのが、うつ病などの2次障害(心の問題)と、コミュニケーションの機会がないこと、つまり廃用です。認知と心は関係が深いので、心の問題が生じると、そもそも話そうという気持ちになりません。言葉が話せないことを、気にしすぎて、会話に入ろうとしなかったりすると、回復の機会を逸してしまいます。「失語症のことを知らない人とは話さないようにしている」こういう失語症の方は、多いようです。たくさん傷ついた経験をしたなかで、学んだ処方箋だと思います。外国に行った経験のある人、少し想像してほしいのですが、「それじゃない」と思っていても、なかなか通じないとき、あきらめちゃうことないでしょうか?それがずっと続くわけです。だんだん、「もういいや」という気持ちになるのは、特別なことではないです。
そして、心の問題は大きいのですが、ケアできる心理職が、病院や地域の施設に配属されていないのは非常に残念です。そして、会話する相手が家族だけ、または家族ともほとんど話さない、そうなると使わないことによる機能低下(廃用)が生じます。廃用は、高スペックな機能の方が進むのではないかと思います。話し言葉より書き言葉、母語より第2言語(多くの人にとっては英語)など、高学年に学習したものほど、使わないとすぐに忘れますよね。なので、言語活動がないと、低下するのも早いのです。入院中に回復した、言語機能は、盤石ではなくて、むしろ脆いのです。
なので、少しでも、会話する機会が大切です。失語症の人に必要な支援は、「毎日でかける場所をつくること」とも言われています。しかし、言語機能の素晴らしいところは、使い始めたら再び改善していくという点です。脳の機能回復に最適という時期を過ぎても、まだまだ回復する可能性は高いのです。長い間、引きこもっていた人が、そうした場所に巡り合えたことで、再び言語機能が回復していったという報告はたくさんされています。
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