失語症・高次脳機能障害者のコミュニケーション問題について「脳に何かがあったとき」その③~言語聴覚士のお仕事
失語症・高次脳機能障害の就労をテーマにした冊子「脳に何かがあったとき」は1年半を超えました!36名以上の方をインタビューして記事にしています。この事業は、厚生労働省老人保健健康増進等事業 『認知症の人の地域における参加・交流の促進に関する調査研究』の一環として、中途障害である失語症・高次脳機能障害の方についての報告を書いています。今日から、文章がかなり堅いですが、その内容をこちらのブログでも公開したいと思います。
本日は、病院では「話せていますよ」と言われるレベルまで回復した失語症・高次脳機能障害者のコミュニケーションの問題について、書きます。
日常会話ができても・・
入院中は、失語症や高次脳機能障害があっても軽度であれば、簡単な会話はできるため、担当の言語聴覚士や主治医から「話はできていますよ」と説明を受けています。しかし、就労の場で求められるコミュニケーションは、長さも質も異なるものであり、求めらえる能力は高いので、たちまち困ってしまいます。
- 相手が複数だと、話についていけない
- メールが往復する間に、なんの話だったのか忘れてしまう。初めからその人のメールを読み返さないと流れがわからなくなる
- 周囲の雑音が邪魔して、相手が話す内容が頭に入ってこない
という理解の問題、そして
- 自分の意見や考えを述べることができない
- 回りくどい言い方になって、結局何がいいたいの?と言われる
- 問い合わせしたいことがうまく伝わらな
などの表出の問題があります。双方とも、日常生活ではあまり問題になりませんが(特に、いろいろ知っている家族との会話)、就労の場ではかなり問題になります。また業務に直接関係がないが、ほとんどの人から聞かれたのが「雑談ができない」という困りごとです。
- どのタイミングでつっこんだらいいのかわからない
- みんなが盛り上がっている中で、一人ぽつんとしている
多くの方がおっしゃいます。これまで病院で言語聴覚士として働いていた時には、この雑談についてのこまりごとは想定していませんでした。
こうしたコミニケーション障害は、孤立化、仕事のミス、周囲の人から誤解を受けるなどの、2次的な問題を引き起こす可能性が高いため、本人にとっては看過できない問題です。
- うまく話せないのが不安で、黙っている
- 言いたいことがあるけど諦めている
- 仕事ができない人のように思われる。聞いてないんですか?とか若いスタッフに言われて傷つく
などの声が聞かれています。
医療や福祉の現場での言葉のリハビリテーションは?
医療や福祉の現場では、こうした高度なコミュニケーションの問題に対応できるようなリハビリテーションは、ほとんど行われていません。ことばを専門とする言語聴覚士でさえ、問題に気が付いておらず、プログラムも確率できていないのが現状です。まとまった文を談話と言いますが、談話障害についての論文は欧米では1995年以降は500件以上ありますが、日本では、事例報告や会話分析の報告が散見されるだけである。
失語症・高次脳機能障害がある人達が行っている工夫として
- ラジオやYouTubeなどを聞くようにしている
- 単語だけでもすぐにメモをする
- メモをなくさないように、手首に巻きつけるタイプのメモを使っている
- メールや会議資料はプリントアウトして事前に読み込んでおく
- 想定問答集を作成して準備している
などがありました。YouTubeは再生速度を調整できるので、私も、生活の中でできるリハビリテーションとしてお勧めしています。
他には
- 雑談に関しては聞き役に徹している。そのほうが好かれている気がする
- 同じ障害がある人と、交流をしている。障害について説明しなくてもいいので、安心感がある
- 文章の練習のためにTwitterなどで発信している
- Facebookなどの文字でのやり取りで頭を鍛えている
SNSの活用をあげる失語症・高次脳機能障害の方も多いです。交流しながらなので、楽しく継続的に取り組めそうです。言語聴覚士によるリハビリテーションが役にたっというエピソードとしては
- メモがとれないので、相手に、僕は忘れてしまうので書いてくださいとお願いしている。こういうのを指導してくれたのがよかった
- 自分の意見を言えるような練習をした
- 日記を毎日かいたことで、記憶の練習にもなった。頭が整理された
などがありました。言語聴覚士さんにも参考になるのではないでしょうか?
会話の練習をYouTubeで発信しています!
こちら、オンライン言語リハビリ「ことばの天使」のYouTubeチャンネルでは、様々な会話の練習について発信しています。生活の中で何をしたらいいのだろうと思う失語症・高次脳機能障害の方、リハビリの時間に何をしたらいいのだろうと悩む言語聴覚士さん
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